噴火していないときにも、火山の周りで注意することはありますか?
まず、火口から常に吹き出している火山ガスです。火山ガスの成分は95%以上が水蒸気ですが、そのほかわずかながらも、二酸化硫黄(SO2)や硫 化水素(H2S)などの有毒ガスが含まれています。火山ガスは、心臓や気管支の弱い人にとっては危険です。火口の周辺では、特に注意してください。また、 火口周辺だけでなく、”硫黄の臭い”のする温泉地帯でも充分な注意が必要です。これらの火山ガスは、空気よりも重たいため、谷間やくぼ地にたまりやすいの で、そのような場所にはなるべく近づかないようにしましょう。
さらに、火山地帯やその下流域では、大雨の際に土石流が発生することがあります。これは雨で地表の火山灰土が削られ、その泥水が大きな岩石や周辺の 立木を巻き込み、運んでしまうものです。また、普通、岩石は水に浮かびませんが、大量の泥を含んだ水は岩石すら浮かすことができるようになります。そのた めに橋・堤防・家などを簡単に壊してしまいます。阿蘇でも1990(平成2)年7月2日に、豪雨によって地表の火山灰土が削られて、一の宮町(阿蘇市)に 大きな被害が発生しました。
↑1990年7月2日の土石流被害の様子(阿蘇市一の宮町)
この他に、地震や大雨による斜面崩壊・地すべりなどによって起こる山崩れ(岩屑なだれ)にも注意が必要です。
2000(平成12)年、中央火口丘群西麓に位置する南阿蘇村長陽において、「河陽F遺跡」の発掘調査が行われました。そこでは、弥生時代(約 2,000年前)を中心とする集落跡が埋まっている様子が観察されました。この集落を埋めた”土”は分析すると、火山灰ではなく岩屑なだれ堆積物でしたの で、弥生時代に大きな山崩れなどが、人々の生活の場所を襲ったことが分かりました。
阿蘇火山では、火山の噴火や地震、山崩れなどの様々な災害が何度も発生していた可能性があり、今後の火山防災を考える上でも重要な意味を持っています。火山活動が静かな時期であっても、火山地域ではこのような災害が発生する危険性があることも知っておかねばなりません。